【ミャンマーの大学事情】日本の大学とは大きく異なる入学制度と大学生のスキル
外国人材のご紹介をしていると、「この学生が通う大学のレベルはどのくらいなのか教えてほしい」といったご質問が良くあります。そこで、今回はミャンマーの大学について紹介します。ちなみに、大前提として、ミャンマーでは大学に進学できる割合が2割~3割のため、大学に通っているだけで優秀層になります。本記事では、ミャンマーの教育段階や大学進学率、主要な大学の特徴や日本と大きく異なる大学入学制度を詳しく紹介します。さらにミャンマーの大学生のスキルセットとして、語学力やITスキルについても併せて紹介します。
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・ミャンマーの教育システムと有名な工科大学について
1. ミャンマーの教育システム

ミャンマーの教育段階は、幼稚園1年、義務教育とみなされている初等教育5年、前期中等教育4年、後期中等教育2年の後に専門学校や短期大学、大学進学となっています。義務教育は日本と異なり、初等教育の5年間となります。この義務教育と見なされる初等教育(日本のイメージだと小学校)は、主に6歳から10歳までの子どもが対象です。この段階では基礎的な読み書きや算数が中心に教えられます。前期中等教育(日本だと中学校のイメージ)は4年間で、後期中等教育(日本だと高校のイメージ)は2年間です。前期・後期中等教育では、より専門的な科目が増え、学生は興味や適性に応じた科目を選択することが求められます。その後、専門学校や短期大学、大学での学習で多くの学生が専門的な知識や技術を学びます。大学においては、ほとんどが国立大学ですが、近年では私立大学も設立され始めている状況です。
※ミャンマーでは常時教育改革が行われており、執筆時(2025年5月)以降は状況により制度が変更する可能性があります。
ミャンマーの基礎教育(初等・中等教育)は小中高 5+4+2 制であり、11 年間の教育を 受ける。義務教育制度は正式にはないが、初等教育は事実上義務教育である。高校生 は、高校最後の学年度末の 3 月に行われ、高校卒業試験を兼ねる全国一斉大学入学試験(セ ーダン試験、10 年生試験)を受け、そこで取得した全教科の合計得点に従って進学希望の 分野を申請する。そして、申請者の得点の高い順に難易度に従い大学学部・専攻に振り分 けられ、定員分だけ入学が許可されるという仕組みである)。8 月頃に合格発表後、12 月に大学入学と進み、16-17 歳で入学となる。近年のセーダン試験の合格率は 3 割程度であり、残り7 割程度は高校を卒業できず、従って大学にも進学できないようである。 なお、2016 年 3 月実施分からは受験者の志望の自由度が増すことになっている。
引用:文部科学省/4-1 ミャンマーにおける大学進学、留学プロセス分析
1.1. 大学進学率と教育の質
ミャンマーの大学進学率は2018年時点では20.37%(短期大学を含む)と他国と比較して低い傾向にありますが、近年では少しずつ改善されていると言われています。進学率の低さは、経済的な理由や教育機会の不均等、教育インフラの未整備などが主な要因です。また、2021年のクーデター(政変)により、教員の数や教育施設が不足している状況で、現在急速に教員の補充を行っている状況です。また、教育の質については、教員が新人ばかりとなっており、教育の質や教材の充実度、教育カリキュラムの現代化が求められています。政府はこれらの問題に対処するために、教育改革を進めています。具体的には、教員のトレーニングプログラムの強化や、教育施設の建設、教材の改善などを推進しています。教育の質の向上は、学生の将来の可能性を広げ、国全体の発展にも寄与するため、国としても非常に重要な課題となっています。
▼参考情報▼
・文部科学省/ミャンマー連邦共和国
・日本私立大学協会/パンデミックと政変後のミャンマーの教育と大学〈上〉
1.2.大学入学も学区制(住んでいる地域内での選択)
近年徐々に変革がされているようですが、基本的にミャンマーでは大学入学において日本の公立小学校、中学校のように入学できる大学は学区制(居住地による振り分け)となっています。さらに高校卒業試験を兼ねる全国一斉大学入学試「セーダン試験」の点数で入れる大学が決まります(大学ごとに何点以上取らないと入れないというルールがあり)。この学区制について、具体的なイメージとしては、ヤンゴンの大学にはヤンゴン在住の人しか通えない制度となっています。そのため、ミャンマーではどの大学が優秀というランキングが特になく、学部で優秀さが決まると言われています。ミャンマー国内で人気かつ、優秀だと言われている学部は手に職が持てる医学部、薬学部、工学部、ITエンジニア系の学部、また、外資系企業への就職がしやすい語学系の学部も人気となっており、優秀な人はこれらの学部を選ぶ傾向にあると言われています。
※一部、ヤダナボンサイバーシティ工科大学、ミャンマー情報技術大学など全国から応募できる大学もありますが、基本的には学区制となっています。
高校最後の学年度末の 3 月に行われ、高校卒業試験を兼ねる全国一斉大学入学試験(セ ーダン試験、10 年生試験)を受け、そこで取得した全教科の合計得点に従って進学希望の分野を申請する。そして、申請者の得点の高い順に難易度に従い大学学部・専攻に振り分けられ、定員分だけ入学が許可されるという仕組みである)。8 月頃に合格発表後、12月に大学入学と進み、16-17 歳で入学となる。近年のセーダン試験の合格率は 3 割程度であり、残り 7 割程度は高校を卒業できず、従って大学にも進学できないようである。
引用:文部科学省/4-1 ミャンマーにおける大学進学、留学プロセス分析(p.83)

▶画像引用:Study in Japan/ミャンマーにおける教育制度と高等教育の現状(2020 年 4 月~2021 年 1 月)
1.3.浪人できない人もいる&2回まで浪人できる場合も
ミャンマーの高校卒業試験を兼ねる全国一斉大学入学試験「セーダン試験」の全教科の合計点数によって進学希望の大学の申請が可能になります。大学はセーダン試験の点数を6科目合計で最低40点以上取らないと大学に入学することが出来ません。その点数を満たしたもののみ大学入学の手続き申請をし、定員分のみ入学許可されます。このセーダン試験の合格率は2割~3割ほどとされていて、7割~8割の学生は大学入学ができない仕組みになっています。ただ、一度でも40点以上をとってしまうと、二度と卒業試験を受ける事は出来ないため、自分の点数に該当する大学を選ぶ必要があります。セーダン試験の大学入学最低点の40点を取れなかった学生は浪人してさらに2回までセーダンの再受験ができますが、不合格が2回続いた場合は公立高校を中退し、就職するか日本語学校等の専門・職業系学校に進学するパターンが多くなります。
セーダン試験不合格の場合、更に 2 回受験が可能である。セーダン不合格者は職業技術教育訓練、言語教育などに よりキャリア形成を行うことが多い。それ以前の高校中退者、中学校中退者、小学校中退者にもそれぞれ で職業技術教育訓練のルートがある。
引用:文部科学省/4-1 ミャンマーにおける大学進学、留学プロセス分析(p.83)
2. ミャンマーの主要な大学紹介
ミャンマーは、近年の教育改革に伴い、高等教育機関(日本でいう大学)が注目を集めています。また、先述したとおり、日本のように〇〇大学が優秀、ということが少なく医学部や工学部など、人気の学部に入っていると優秀と見なされます。また、ミャンマーでは大学進学率が2割から3割程度と言われており、上位の学力がないと大学進学できないシステムのため、大学に通っているというだけでも優秀層となります。
前置きが長くなりましたが、以下にミャンマーの主要な大学について紹介し、それぞれの大学がどのような特色を持つのかを紹介します。今回の大学は私たちが外国人採用で日本企業様にご紹介する外国人材が出ている大学になります。
ミャンマーの主要な有名大学
・ヤンゴン工科大学
・マンダレー工科大学
・タンリン工科大学
・西ヤンゴン工科大学2.1. ヤンゴン工科大学/国立

ヤンゴン工科大学(Yangon Technological University , YTU)は、ミャンマーのヤンゴン管区インセイン郡ギョゴンにあるエリート工科大学で、1924年に設立されました。ヤンゴン工科大学はミャンマー最古かつ最大の工科大学であり、約8,000人の学生が在籍しており、工学分野の学士、修士、博士課程を提供しています。学士課程は6年制で、建築学を含む12の工学分野を提供しており、大学院では修士(2年制)および博士(3〜5年制)の課程が設けられ多岐にわたる分野を学ぶことができます。卒業生は、政府機関、インフラ関連企業、製造業、IT企業などで活躍しており、ミャンマーの産業発展において重要な役割を果たしています。日本の大学で例えると、東京工業大学、大阪大学、名古屋大学、北海道大学、九州大学に近いイメージで考えられます。
学部
建築学部、土木工学部、機械工学部、電力工学部、電子工学部、電気通信工学部、コンピュータ工学・情報技術学部、メカトロニクス工学部、化学工学部、繊維工学部、食品工学部、鉱山工学部、石油工学部、材料科学・冶金工学部、バイオテクノロジー学部、工学地質学部、工学物理学部、工学化学部、工学数学部、言語学部2.2. マンダレー工科大学/国立

マンダレー工科大学(Mandalay Technological University, MTU)は、ミャンマーで最も古い工学教育機関の一つです。ヤンゴン工科大学(YTU)と並んでミャンマー国内では技術系のトップ校として認識されています。1955年12月20日、ビルマ連邦(ミャンマー)のウー・ヌー首相によって開校された政府技術大学として設立されました。当時、ディプロマレベルの工学教育が行われており、1999年8月、政府は政府技術大学に昇格させ、さらに2007年1月20日にマンダレー工科大学に昇格しました。マンダレー工科大学は63年にわたる工学教育の経験を有しています。また、”地域レベルで国際基準の技術系大学としての地位を確立し、研究と革新に基づいた幅広い技術のより良い未来を創造できるエンジニアと建築家を育成する”ことをビジョンとして掲げており、技術系に特化した大学です。日本の大学のイメージで例えると、ミャンマーの地方都市にある、技術系に特化した国立大学であり、日本の長岡技術科学大学や豊橋技術科学大学、九州工業大学などに近い存在といえます。
学科
土木工学、機械工学、電力工学、電子工学、メカトロニクス工学、情報技術(IT)、化学工学、冶金工学、鉱業工学、建築学、繊維工学、地質工学2.3. タンリン工科大学/国立

タンリン工科大学(Technological University, Thanlyin)は、ミャンマーの首都圏近郊ヤンゴン管区タンリンにある工科大学で比較的新しい大学です。科学技術省が運営するこの大学では、工学と建築学の学士課程と修士課程を提供しています。1986年に技術訓練校として設立され、2007年にはタンリン工科大学に昇格しました。実践的な工学教育に力を入れる新興技術系大学であり、ミャンマーの発展に向けて国家建設に携わる優秀なエンジニアや建築家を育成し、国際的に認められた高ランクの大学となることを目標としています。都市圏近郊にある新興の国立工業大学といった立ち位置で、日本の大学で考えると公立はこだて未来大学や、電気通信大学(技術特化・首都圏)のような比較的小規模で、特定分野に力を入れる大学、あるいは成長途中の地方の工業系大学が近いイメージとなります。
主要な学部学科
土木工学、建築工学、電気工学、電子工学、電力工学、機械工学、情報工学、化学工学、石油工学2.4. 西ヤンゴン工科大学/国立

西ヤンゴン工科大学(West Yangon Technological University, WYTU)は、ミャンマーにおける工学系の大学の一つで、特に 応用工学教育や地域社会への技術支援に力を入れている新興大学です。また、日系企業との協力も一部あり、人材輩出も期待されています。日本の大学で例えると地方にある実務・応用寄りの工学系大学として、福井工業大学(私立の技術実学系)や、秋田県県立大学工学システム学部といった理論よりも実用的な教育を重視する工学系中堅校というイメージです。
学部
土木工学部、機械工学部、電力工学部、電子工学部、建築学部、メカトロニクス工学部、情報技術学部3. ミャンマーの大学生のスキル

ミャンマーの大学生は、近年、国際社会での競争力を高めるため、多様なスキルを身につけることに注力しています。特に、語学力やITスキル、リーダーシップ能力などが重要視されています。これらのスキルは、グローバルなビジネス環境において必要不可欠であり、各大学ではそれらの育成に努めています。教育カリキュラムの改革やインターンシップの導入によって、実践的なスキルを持つ人材を育てることが求められています。これにより、ミャンマーの学生たちは、国内外の企業で活躍する準備を整えています。
3.1. 語学力の状況
ミャンマーの大学生における語学力は、国内での情勢が整わないことから就労が難しいため外貨を稼ぐことに注力しており、近年、語学力が着実に向上しています。特に日本語、英語能力の向上は顕著であり、多くの大学では英語を必修科目として取り入れています。高校生の時点で理系の人たちは授業が英語で行われることが多く、英語が堪能です。さらに、英語以外の外国語では、日本語も多く学ばれており、日本語検定の受験者は年々増加傾向となっており、受検者は中国に次ぐ第二位となっています。このようにミャンマーでは、多様な言語スキルを持つ学生が増加しています。ミャンマーでは語学学校やオンラインプラットフォームの利用も広がり、学生たちはより柔軟に学習機会を得られるようになっています。
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3.2. ITスキルの普及度
ミャンマーの大学生におけるITスキルの普及度は、情報技術の進展に伴い、急速に増加しています。多くの大学でコンピュータサイエンスや情報技術に関するコースが提供され、学生たちはプログラミングやデータ分析などのスキルを習得しています。これにより、彼らはグローバルなIT市場で競争力を持つ人材として育っています。特に、ウェブ開発やアプリ開発の分野は人気が高くなっています。また、オンラインでのITスキル修得のためのリソースも充実しており、自主的に学ぶ学生が増えています。これらの取り組みは、ミャンマーのデジタルインフラの発展にも貢献しており、ITスキルを持つ人材の需要は今後も高まると考えられます。
▼参考情報▼
独立行政法人 国際協力機構(JICA)/ミャンマー国 IT 人材育成の可能性の基礎調査 業務完了報告書
まとめ
ミャンマーの大学事情について紹介しました。ミャンマーで有名な大学をご紹介していますが、そもそもミャンマーでは大学進学率が2割~3割であり、なおかつ入学において浪人はできず、一発勝負のテストで入学できる大学が決まります。(試験で基準点を満たさない場合は2回まで浪人ができます)。そのような状況のため優秀な層しか大学に入学できない条件となっており、日本以上に大卒の重みがあると考えられます。また、近年、ミャンマーではITや技術系の学部が注目されて人気となっています。さらに、英語能力や日本語能力も向上しているため、国際的な職場環境にも対応しやすい人材が増加しています。人材不足となっている日本企業においては、若者が多く、ラストフロンティアと呼ばれているミャンマーから優秀な人材を採用することは、企業価値を高めるチャンスになるでしょう。

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